扉はVPNだった
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岡山県精神科医療センターのランサムウェア被害:侵入経路と経過

推測しやすいパスワードのまま、2018年から更新されず、接続元の制限もない保守用 SSL-VPN 機器が侵入口になった。

岡山県精神科医療センター病院(地方独立行政法人、精神科)JPランサムウェア

1 概要

2024年5月19日(日)16時ごろ、病院の電子カルテが使えなくなった。翌朝、ベンダーがランサムウェアを確認した。後のフォレンジック調査で、侵入者は5月13日2時41分から院内にいたことが分かった。最大4万人分の個人情報が漏洩した。調査委員会は、データセンターの保守用 SSL-VPN 機器を侵入口とした。

推定原因: 推測しやすいパスワードのまま、2018年から更新されず、接続元の制限もない保守用 SSL-VPN 機器が侵入口になった。

VPN 機器外部社内ネットワーク
図 4-4-1岡山県精神科医療センターの侵入口

出典: ソフトウェア協会 Software ISAC 岡山県精神科医療センター ランサムウェア事案調査委員会 ランサムウェア事案調査報告書 (pp.12–13, 16–17, 20–21, 30–31)

S=1:100 2 事実情報

2.1 侵入口

調査委員会は「保守用 VPN 装置への接続元 IP アドレス制限がなく、インターネット上から誰でも攻撃が可能であった」とし、原因として SSL-VPN への辞書攻撃、初期アクセスブローカーからの認証情報の購入、SSL-VPN の脆弱性の悪用の3つを挙げている。

出典: ソフトウェア協会 Software ISAC 岡山県精神科医療センター ランサムウェア事案調査委員会 ランサムウェア事案調査報告書 (pp.12–13, 16–17, 20–21, 30–31)

製品
Cisco ASA 5506-X(保守用 SSL-VPN)
CVE
記載なし

2.2 侵入後

約6日間、侵入者はネットワークをスキャンし、バックアップを探して破壊し、Active Directory から利用者とコンピュータの情報を窃取し、ウイルス対策ソフトを停止・削除し、共有フォルダの Office 文書を持ち出した。暗号化は5月19日13時10分から17時34分に行われ、仮想サーバ23台、共有ストレージ、仮想基盤の物理サーバ3台、その他の物理サーバ6台、端末244台が被害を受けた。共有ストレージのデータは全喪失した。契約していたオフラインバックアップは正しく取得されていなかった。

2.3 被害

病院と診療所で電子カルテが停止した。紙カルテで診療を続け、診療は止めなかった。岡山県警が情報の窃取と漏洩を確認し、推定で氏名、住所、生年月日、病名を含む最大4万人分の個人情報が漏洩した。復旧には約3か月かかり、暗号化を免れた DWH サーバからデータを戻した。

2.4 経過表

時刻主体出来事出典
2024-05-13 02:41侵入者最初の侵入。18日まで連日、ネットワークスキャン、AD 構成情報と共有フォルダのデータの窃取、バックアップの探索。ソフトウェア協会 Software ISAC 岡山県精神科医療センター ランサムウェア事案調査委員会
2024-05-14 22:56侵入者AD サーバにリモートログオンし、ネットワークスキャナーを設置。ソフトウェア協会 Software ISAC 岡山県精神科医療センター ランサムウェア事案調査委員会
2024-05-16侵入者16日から18日にかけて、AD サーバの認証情報の窃取とバックアップデータの削除。ソフトウェア協会 Software ISAC 岡山県精神科医療センター ランサムウェア事案調査委員会
2024-05-19 13:10侵入者各サーバ・端末の暗号化を開始(17時34分まで)。ソフトウェア協会 Software ISAC 岡山県精神科医療センター ランサムウェア事案調査委員会
2024-05-19 16:00ごろ病院病院スタッフが電子カルテの停止を確認し、ベンダーに連絡。ソフトウェア協会 Software ISAC 岡山県精神科医療センター ランサムウェア事案調査委員会
2024-05-20 06:15ごろベンダーバックアップファイルに不審な拡張子を発見し、ランサムウェアと確認。ソフトウェア協会 Software ISAC 岡山県精神科医療センター ランサムウェア事案調査委員会
2024-05-20 07:00ごろ病院対策本部会議で、入院・外来とも紙カルテで診療を続けると決定。ソフトウェア協会 Software ISAC 岡山県精神科医療センター ランサムウェア事案調査委員会
2024-05-20 16:00病院ホームページとプレスリリースで電子カルテの停止を公表。ソフトウェア協会 Software ISAC 岡山県精神科医療センター ランサムウェア事案調査委員会
2025-02-13調査委員会調査報告書を公表。ソフトウェア協会 Software ISAC 岡山県精神科医療センター ランサムウェア事案調査委員会

S=1:100 3 分析

項目判断出典
SSL-VPN の ID とパスワードは推測可能なもので、同じ組み合わせが全 Windows 機の管理者の認証情報にも使われていた。記載ソフトウェア協会 Software ISAC 岡山県精神科医療センター ランサムウェア事案調査委員会
保守用 VPN 機器に接続元 IP アドレスの制限がなかった。記載ソフトウェア協会 Software ISAC 岡山県精神科医療センター ランサムウェア事案調査委員会
最初の侵入はサーバのフォレンジック調査により2024年5月13日2時41分と確認された。記載ソフトウェア協会 Software ISAC 岡山県精神科医療センター ランサムウェア事案調査委員会
3つの原因(辞書攻撃、購入された認証情報、脆弱性)のいずれか。推定ソフトウェア協会 Software ISAC 岡山県精神科医療センター ランサムウェア事案調査委員会
VPN 機器側の記録。Syslog は機器内の小さなメモリにしか保存されず、上書きされていた。不明ソフトウェア協会 Software ISAC 岡山県精神科医療センター ランサムウェア事案調査委員会

S=1:100 4 結論

調査委員会は、保守用 SSL-VPN 機器から侵入され、どこでも共通の管理者の認証情報によって拡散、情報窃取、暗号化に至ったと結論した。「多くは、厚労省ガイドラインの遵守で容易に防げたものである」としている。

S=1:100 5 再発防止策

提言・実施の主体: 病院(調査報告書に記載の実施済み対策)

  1. 多要素認証と接続元制限のある仕組みで VPN を置き換える。
  2. ビルトイン Administrator の使用をやめ、管理者は個別の ID と16桁以上のパスワードにする。
  3. リモートデスクトップに接続元制限とロックアウトを設定する。
  4. 電子カルテシステムを標準ユーザーで運用できるよう改修する。
  5. ベンダー独自の VPN 機器について、ファイアウォールを刷新し接続元 IP アドレスを制限する。
  6. 5回連続で認証に失敗したらロックアウトする。

出典: ソフトウェア協会 Software ISAC 岡山県精神科医療センター ランサムウェア事案調査委員会 ランサムウェア事案調査報告書 (pp.12–13, 16–17, 20–21, 30–31)

出典

出典: ソフトウェア協会 Software ISAC 岡山県精神科医療センター ランサムウェア事案調査委員会 ランサムウェア事案調査報告書 (pp.12–13, 16–17, 20–21, 30–31)

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